いんげんまめ(菜豆)には、豆の色・形、草型等が違う様々な種類がありますが、特に、つるを出すか否かによって栽培方法が大きく異なります。このため、つるを出さない「わい性タイプ」と、つるを出し栽培時に支柱が必要となる「つる性タイプ」に2分し、それぞれ学校や家庭において花壇・菜園等で、乾燥豆の生産を目的として栽培する方法をご紹介します。
つるなし(わい性タイプ)のいんげんまめの栽培方法
つるを出さない「わい性タイプ」のいんげんまめの代表として、金時類、うずら類の栽培方法をご紹介します。
種子の入手
いんげんまめは、光や温度から生育・開花に大きな影響を受けるあずきとは異なり、環境条件への適応性が広いため、国内生産の大部分を占める北海道の品種を都府県で栽培しても大きな支障が生じることはないようです。このため、種子は園芸・種苗店等で栽培用のものを入手するに越したことはありませんが、学校や家庭での栽培であれば、乾物屋やスーパーで食用として売られている乾燥豆でも十分使用可能です。
金時類には、赤紫色の金時豆と白色の白金時豆があり、具体的品種としては、赤紫色系には「大正金時」、「福勝(ふくまさり)」、「福良金時(ふくらきんとき)」、「福寿金時」、白色系には「福白金時」などがあります。うずら類には、つるを出さないわい性タイプの品種(「福うずら」等)のほか、つるを出す半つる性タイプの品種(「福粒中長(ふくりゅうちゅうなが)」等)もありますが、栽培しやすい前者を選んだほうがよいでしょう。
なお、種苗店等で栽培用として販売されているいんげんまめ種子の多くは、未熟のさやを収穫するためのさやいんげん用品種で、これを完熟させても食用に適した乾燥豆を得ることはできません。このため、乾燥豆の生産には「実取」等と表示されているものを選びます。また、つるの出ない品種は「つるなし」と表示されている場合が多いようです。
播種時期
種まきは、北海道、北東北では5月下旬~6月中旬頃、関東では4月中旬~5月上旬頃に行います。西日本では、多雨による湿害を回避するため、4月上中旬頃に播いて梅雨までにできるだけ生長を進めるか、梅雨明けの7月上中旬頃に播くのがよいされています。
栽培場所・用土
菜園等で栽培する場合、栽培場所や土質は特に選びませんが、極端に水はけや日当たりの悪い場所や粘土質の場所は避けます。
プランターや鉢で栽培する場合は、畑や庭の土、市販の園芸用培養土などを使います。
植え方
菜園等の場合は、土を25cm程度の深さで耕してから平らにならし、50~60cm間隔で深さ10cm程度の溝を作り、その中に肥料をすじ状に落とし、後から播く種子が肥料と接触しないように埋め戻します。肥料は、複数の肥料成分が含まれている化成肥料や家庭園芸用複合肥料等を用い、施肥量は野菜などを栽培する時よりかなり少なめとします。具体的な施肥量は、窒素の成分量が3~4kg/10a(=3~4g/㎡)程度となるよう、下記を参考にして計算してください。肥料を埋め戻したら、その上に20cm程度の間隔で1箇所当たり2、3粒、3cm程度の深さに種を播いていきます。
鉢・プランターの場合は、単位面積当たり施肥量を上記の菜園等の場合の2倍程度とし、播種前に肥料を用土全体に混ぜ合わせておきます。直径20cm程度の深鉢であれば中央に2~3粒、細長いプランターであれば1箇所2~3粒ずつ3箇所程度、3cm程度の深さに種を播きます。播種後、乾き過ぎない程度に水をかけます。いんげんまめは過湿を嫌う作物なので、出芽後も潅水は乾き過ぎない程度に止めます。
播種後およそ5日から10日程度で出芽してきます。 |
出芽してきた金時豆
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【参考】化成肥料等を使う場合の具体的な施肥量の計算方法
複数の化学肥料成分を含む化成肥料や家庭園芸用複合肥料等の製品には、成分についてN:P:K=6:8:8、10-10-10等といった表示がなされています。これは、その化成肥料等に含まれている窒素、リン酸、カリの各成分の含有量を重量割合(%)で表したものです
(ただし、15-15-10を550、14-12-14を424などと数字を一部省略して表示している場合があることに注意。)
。このように肥料は個々の製品により成分の含有割合が異なるため、実際の施肥量は、耕種基準等において成分量で表示された単位面積当たり施肥量から、次のような計算式で換算して求めます。この場合、通常、リン酸、カリは考慮せず、窒素を基準にして計算します。
●計算式
化成肥料等(製品)の施肥量(単位:g)=成分量表示による単位面積当たり窒素施肥量(単位:g/㎡、単位がこれと異なる場合は予め換算が必要)÷使用する化成肥料等の窒素成分含有割合(%)×100×栽培面積(㎡)
●計算例 1(1坪の菜園の場合)
条件:成分量表示の窒素施肥量:4kg/10a、使用する化成肥料等の窒素成分含有割合:10%
成分量表示による単位面積当たり窒素施肥量の単位の換算:4,000g÷1,000㎡=4g/㎡
化成肥料等(製品)の施肥量=4g÷10%×100×3.3㎡=132g
●計算例 2(20cm×50cmのプランターの場合)
条件:
成分量表示の窒素施肥量:8g/㎡、使用する化成肥料等の窒素成分含有割合:6%
化成肥料等(製品)の施肥量=8g÷6%×100×0.1㎡=13g
開花・着莢
日当たりの良い場所で育てると、出芽してから1か月程度で金時豆はピンク、うずらまめは薄紫色の花が咲き始め、約2週間にわたり次々に咲き続けます。
花弁が枯れ落ちた後、莢がついて次第に大きくなります。なお、咲いた花のすべてが莢になるわけではなく、半分以上は自然に落花します。
追肥
莢がつき始める頃、葉の色が薄くなっていくようであれば追肥をします。菜園等の場合は化成肥料を株元にパラパラと少量まきます。鉢・プランターの場合は、液肥などを与えます。
病害虫防除
農薬を使用する場合は、必ずいんげんまめが適用作物となっている登録農薬を使用し、使用時期、使用方法、注意事項等を守ってください。また、周辺の作物等にかからないよう十分注意をしてください。
収穫・乾燥
開花後、1か月半~2か月で、莢は緑色から黄色、白褐色へと変色しながら乾いていきます。同時に葉も緑色が薄くなり、やがて黄色く変色して落葉します。この時期に莢が雨に当たると、莢の中の豆の色が薄くなったり、腐ったりするので注意が必要です。
菜園等の場合、7~8割の莢が白褐色に変色したら株を刈り取り、軒下に吊るすなど雨が当たらない場所で、莢を軽く振ってカラカラ音がする程度まで乾燥させます。
鉢・プランターの場合は、莢を軽く振ってカラカラと音がするようになったら、莢を摘み取り、新聞紙などの上に 広げて乾燥させます。
乾燥させた莢・株は、新聞紙やビニールシートの上に積み重ね、上から棒で叩いて脱粒(莢から豆粒を出させること)します。
成熟期の金時豆の姿
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成熟した金時豆の莢と子実
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(本稿は「北海道立十勝農業試験場 作物研究部小豆菜豆科 Q&A」、「そだてて遊ぼう インゲンマメの絵本(農文協の園芸絵本シリーズ81巻、十勝農業試験場菜豆グループ編)」等を参考にして作成しました。)
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