つる性タイプの栽培方法(北海道)
北海道の産地における大福類、虎豆類、花豆類など、つる性タイプで栽培時に支柱が必要な「高級菜豆」に共通する栽培方法の概要をご紹介します。なお、北海道での花豆類の栽培は白花豆が主流ですが、一部で紫花豆(在来種)の栽培もみられます。
栽培スケジュール概要
北海道のつる性タイプのいんげんまめ(大福、虎豆、花豆類)の栽培暦



施肥・播種
高級菜豆のうち、大福類や花豆類の播種は5月中下旬に行われ、虎豆類はこれらより1週間程度遅播されることが多いようです。高級菜豆は株間が広い上、支柱立て等の播種後の作業を容易に行うため株間を正確にとる必要があるため、播種は手作業で行い、その後、機械で覆土、鎮圧を行います。
栽植様式は産地や栽培農家によりバラツキが大きいようですが、標準的な目安は以下のとおりです。
北海道の高級菜豆の標準的な栽植様式
豆の種類 |
条間 |
株間 |
1株当たり播種株数 |
10a当たり株数 |
大福類 |
72cm |
66~72cm |
2粒 |
1,900~2,100株 |
虎豆類 |
66cm |
60~66cm |
2粒 |
2,200~2,500株 |
花豆類 |
72~75cm |
72~75cm |
2粒 |
1,800~1,900株 |
10a当たり施肥量(基肥)は、地帯や土壌により異なりますが、おおむね以下のとおりです。
北海道の高級菜豆の標準的な施肥量
|
N(窒素) |
P(燐酸) |
K(カリ) |
10a当たり成分量 |
2.5~4kg |
10~18kg |
8~10kg |
播種後、2週間程度で出芽してきます。

播種後の鎮圧作業(白花豆)*
|
|

支柱立て作業(虎豆)*
|
管理作業
雑草の除去・抑制、土壌通気性の改善、地温上昇等の目的を兼ね、出芽後5日目頃に畦間サブソイラ等により中耕を行います。
その後、手竹と呼ばれる支柱を立てます(支柱立て)。支柱は、畦を跨いで生育してきた豆の外側に立て、4本1組にして上端部分をテープで結束して固定します(竹しばり)。
支柱を立てたら、つるが支柱にうまく巻き付きながら伸長するよう誘引作業を行います(つる上げ)。
出芽後15日目頃から急激に伸長スピードが速まるため、支柱立て、つる上げ作業は、適期を逃さないように行います。
生育量に応じ、開花盛期(7月下旬~8月上旬)に4kg/10a程度(成分量)の窒素を追肥します。

生育初期の白花豆
|
|

白花豆の草姿
|
開花
つる性いんげんまめである大福類及び虎豆類は、7月中下旬に開花期を迎えます。花は数週間にわたり咲き続け、自家受精をして順次結莢してゆきます。開花総数に対する莢まで生育した花の数の割合(結莢率)は15%前後といわれてています。
べにばないんげんである花豆類は、7月中旬に開花期を迎え、花は1か月以上咲き続けます。花豆類は、花の構造上、葯が柱頭の下部に位置していて自家受精しにくいため、主に蜂等の受粉者により他家受精するとされています。また、非常に多くの花をつけますが、開花・結実期の気温が30℃を超えない栽培適地(寒地、高冷地)でも結莢率は5%程度と非常に低く、その他の地域ではほとんど結莢しません。
病害虫防除
7月下旬~8月下旬までの間、病害虫防除のため農薬を散布します。薬剤防除の対象となる主要病害虫は、以下のとおりです。
北海道の高級菜豆栽培における防除対象主要病害虫
区分 |
防除対象主要病害虫 |
病害 |
菌核病、灰色カビ病、炭そ病等 |
虫害 |
タネバエ、アズキノメイガ等 |
収穫
当初は緑色だった莢は、成熟期が近づくと淡緑色,から黄色となり、さらに褐色へと変化していきます。熟莢率が70~80%に達する頃が成熟期です。
大福類や虎豆類は、成熟期(9月上旬~下旬)に達した時点で、支柱に巻きついたままの状態で茎を地際から切断(根切り)します。一方、花豆類は、初霜までに株全体が成熟期に達することはむしろ稀で、生育期間中に霜にあうと豆の変色等品質が低下するため、成熟期に達していなくても初霜の約2週間前(9月下旬)に根切りを行って生育を終了させます。
根切り後の乾燥方法は、豆の種類、地域、労働力事情等により様々です。大粒で乾燥しにくい花豆類は、根切りして数日間そのままの状態で予乾した後、支柱から茎をはずしてニオ積み乾燥させる方法か、支柱ごと井桁状に積み上げて乾燥させた後、脱粒作業時に茎を支柱からはずす方法をとることが多いようです。一方、虎豆類や大福類では、手間のかかるニオ積み等を省略し、収穫物を支柱ごと集め、束にして縦置きで乾燥させる方法か、根切り後、ほ場でそのままの状態で乾燥させ、脱粒作業の直前に支柱ごと集める方法をとることが多く、いずれの場合も、支柱はずしは脱粒時に同時並行して行います。
乾燥後、ビーンスレッシャを用いて脱粒作業を行いますが、特に大粒の花豆類の場合は、割れ粒や皮切れ粒の発生による商品価値の低下を防ぐため、スレッシャの回転数を十分に調整して行います。
 成熟期を迎えた大福豆
|
|
 ニオ積み作業(白花豆)*
|
(本稿は、「西胆振における“高級菜豆”の生産と流通」(昭和48年3月、農林省函館統計情報事務所伊達出張所)、「高級菜豆の栽培技術」(昭和62年3月、留辺蕊町・網走支庁北見地区農業改良普及所)、「べにばないんげんの栽培」(2008年1月、網走農業改良普及センター本所)等を参考にして作成しました。また、*印の写真は、北海道農政部農政課の「農業・農村リアル素材提供事業」によるフリー素材画像を利用しました。)
|