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H1

豆の主な栄養素

コンテンツ

主要栄養成分の構成による豆類のグループ分け

豆類は、含まれている主要栄養成分の構成により、次の2つのグループに大別することができます。

炭水化物を多く含むグループ

あずき、ささげ、いんげんまめ。べにばないんげん(花豆)、えんどう、そらまめ、ひよこまめ、レンズまめなどがこのグループに属しており、乾燥豆の重量の50%以上がでんぷんを主体とする炭水化物です。また、これらの豆は、たんぱく質も約20%と豊富に含む一方、脂質は約2%しか含んでいません。このため、健康維持やダイエットに最適な「低脂肪・高たんぱく」食品ということができます。

脂質を多く含むグループ

大豆及び落花生がこのグループに属しています。大豆は、乾燥豆の重量の約20%が脂質で大豆油の原料として世界的に広く利用されています。また、たんぱく質も30%以上と非常に多く含んでおり、「畑の肉」と呼ばれるのはこのためです。一方、炭水化物の含有量は約30%で、「炭水化物を多く含むグループ」の豆の半分程度となっています。
落花生も大豆と類似した栄養成分構成ですが、脂質の含有率が約50%と極めて高く、たんぱく質も約25%含んでいます。

各種豆類(乾燥豆)の栄養成分の構成割合
(乾燥豆100g当たりの含有量 単位:g)

(炭水化物を多く含むグループ)
豆の種類 炭水化物 脂質 たんぱく質
あずき 58.7 2.2 20.3
ささげ 55.0 2.0 23.9
いんげんまめ 57.8 2.2 19.9
花豆 61.2 1.7 17.2
えんどう 60.4 2.3 21.7
ひよこまめ 61.5 5.2 20.0
緑豆 59.1 1.5 25.1
そらまめ 55.9 2.0 26.0
たけあずき 61.8 1.6 20.8
レンズまめ 60.7 1.5 23.2
らいまめ 60.8 1.8 21.9
(脂質を多く含むグループ)
豆の種類 炭水化物 脂質 たんぱく質
大豆 29.5 19.7 33.8
落花生 18.8 47.5 25.4

(注)「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より作成

豊富に含まれるビタミンB群、各種ミネラルや機能性成分

いずれのグループに属する豆も共通して、エネルギーや物質の代謝に重要な役割を果たしているビタミンB1、B、B6などのビタミンB群を豊富に含んでいます。
また、生体組織の構成や整理機能の維持・調節に重要な役割を果たすカルシウム、リン、カリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラル類をバランスよく含んでいます。
さらに、生活習慣病の予防など健康に及ぼす効果が注目されている食物繊維、ポリフェノールなどの様々な機能性成分も含んでおり、食品として非常に優れた特性を持っています。
なお、食物繊維については、炭水化物の一部であることから栄養素の中に区分する方法もありますが、ここではその機能に注目して、機能性成分として取り扱います。

炭水化物(糖質)

炭水化物(carbohydrates)は、単糖類を構成成分とする有機化合物の総称です。その名前の由来は、これらを分子式で表わすと多くの場合 CmH2nOn (C:炭素、H:水素、O:酸素、m及びn:任意の数字)となり、Cm(H2O)n と書き直すと炭素と水が結合したように見えるためです。
ただし、栄養計算などに広く用いられている「日本食品標準成分表」を始めとして食品成分表示上の炭水化物は、ほとんどの場合、炭水化物を構成する各種成分を個別に定量して積み上げたものではなく、全体重量から他の主要成分(たんぱく質、脂質、灰分及び水分)の重量を差し引いて便宜的に求めたもので、「差し引き炭水化物」と称されることもあります。このため、必ずしも上記の炭水化物の定義に当てはまらない成分の重量も含んだ値となっています。
また、糖質については、炭水化物と同義語のように使用されることもありますが、食品の成分表示を行う際の用語としては、炭水化物のうちヒトの消化酵素で消化できない成分の総体を「食物繊維」とし、それ以外の成分が「糖質」と定義されています。さらに、糖質のうち単糖類及び二糖類(糖アルコールは除く)は「糖類」と定義されています。
糖質は、植物の主要な構成要素であることから、人類は、古くから食事の中で最大のエネルギー源として摂取してきました。糖質は、すべて単糖類に分解されてから吸収されます。単糖類には、主なものとしてブドウ糖(グルコース:glucose)、果糖(フルクトース:fructose)、ガラクトース(galactose)があります。
その他の代表的な糖質は、いずれも単糖類がいくつか結合したもので、砂糖の主成分であるショ糖(スクロース:sucrose)はブドウ糖と果糖が結合した二糖類、でんぷん(スターチ:starch)はブドウ糖が多数結合した多糖類です。

日本食品標準成分表上の炭水化物を構成する成分

日本食品標準成分表上の炭水化物を構成する成分

  1. 少糖類は単糖類が2~9、多糖類は10以上結合したものである。
  2. オリゴ糖は、本来は少糖類と同義で二糖類を含む概念であるが、三糖類以上の少糖類の総称として用いられることが多い。これらの中には、難消化性のものが多く、日本食品標準成分表上の食物繊維の定義に該当するが、その量は、現在採用されている食物繊維の定量法上の制約から、成分表に記載された食物繊維の成分値に反映されていない。
  3. 糖類は、栄養表示基準において、「単糖類、二糖類であって糖アルコールでないもの」と規定されている。
  4. リグニンは、厳密には芳香族高分子化合物であって炭水化物ではないが、日本食品標準成分表では炭水化物にカウントされており、また、当初から食物繊維の主要構成成分とみなされている。

穀類、豆類、いも類などに含まれている炭水化物(糖質)の主体はでんぷんで、消化酵素により分解されてブドウ糖となり、小腸で吸収されてから肝臓に運ばれ、肝動脈を通じて各組織に送られ、代謝・分解されて体を動かしたり体温を維持するために必要なエネルギーを生み出します。また、ブドウ糖の一部は肝臓や筋肉でエネルギー貯蔵物質であるグリコーゲン(glycogen)に変換されて蓄えられ、必要に応じ分解されてエネルギーを供給します。なお、糖質からのエネルギー発生量は、1g当たり概ね4kcalとされています。
一方、過剰な糖質は脂肪に変えられ、体脂肪として蓄積されます。このため、糖質を摂ると肥るのではないかと敬遠する人がいますが、脳、神経系、赤血球はブドウ糖を唯一のエネルギー源としており、適切に供給されない場合は、これらの正常な働きに支障を来たしかねません。
血液中のブドウ糖(血糖)が筋肉などの組織でエネルギー源などとして利用される際、筋肉細胞への血糖(ブドウ糖)の取り込みを促進する働きをしているのが膵臓から分泌されるインスリン(insulin)というホルモンです。食事後、血糖値が上昇してしばらくすると一定値まで下がるのは、インスリンが分泌されて、血糖値が下がるためです。この血糖調節機能が正常に働かなくなると、ブドウ糖が筋肉組織などに取り込まずに、高血糖の状態が続き、ひいては2型糖尿病の発症に至ることがあります。
あずき、いんげんまめ、えんどう、そらまめなど「炭水化物を多く含むグループ」の豆は、いずれも炭水化物の含有率が60%前後、これから食物繊維を差し引いた糖質の含有量は40%程度で、ヒトにとって一番主要なエネルギー源である糖質を豊富に含む食品の代表格と言えます。

豆類と代表的食品の炭水化物の含有量
(可食部100g当たり 単位:g)
豆類と代表的食品の炭水化物の含有量(可食部100g当たり 単位:g)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

たんぱく質

体の最小単位である細胞は、水分以外はほとんどがたんぱく質(protein)で構成されており、たんぱく質は筋肉、皮膚、血液、内臓などの主要成分となっています。また、体内のたんぱく質には寿命があり、絶えず分解と生成を繰り返し、新陳代謝されています。さらに、エネルギーが糖質の摂取などで十分な時は、たんぱく質は体の組織の生成に使われますが、エネルギー不足時には、1g当たり概ね4kcalのエネルギー源となります。
たんぱく質は、一部の特殊なものを除き、20種類あるアミノ酸(amino acid)を構成単位とし、これらが種々の組み合わせで結合したものです。食物として摂取されたたんぱく質は、体内で一度アミノ酸に分解された後、再び自分の体に必要なたんぱく質に合成されます。このアミノ酸の中には体内では合成できないか、十分な量を合成できないものが9種類あり、不可欠アミノ酸又は必須アミノ酸(essential amino acid)と呼ばれています。不可欠アミノ酸は、必ず食品から摂取しなければならないうえ、1種類でも一定量に満たない種類があると、それが制限要因となって体内でのたんぱく質合成が効率的に行われません。
このため、食品のたんぱく質の栄養的な価値を考える際には、単に含有量が多いかどうかだけではなく、含まれている不可欠アミノ酸の種類と量のバランスに注目する必要があり、その評価にはアミノ酸スコア(amino acid score)という指標が用いられます。アミノ酸スコアの算出には、不可欠アミノ酸の種類ごとに設定されたアミノ酸評点パターンと呼ばれる基準値が使用されます。アミノ酸評点パターンは、ヒトのたんぱく質必要量とアミノ酸必要量に関する研究に基づき、不可欠アミノ酸の種類ごとに設定されたたんぱく質の単位量当たりの理想的な含有量です。アミノ酸スコアは、不可欠アミノ酸の種類ごとに、この評点パターンと評価対象食品のたんぱく質に含まれる不可欠アミノ酸の量を比較し、前者を100とした場合の値が100未満のもの(制限アミノ酸)のうち最も低いもの(第一制限アミノ酸)の値をもって表します。 例えば、精白米のアミノ酸スコアは、FAO/WHO/UNUの 1985年報告のアミノ酸評点パターンを使った場合は58ですが、2007年報告のパターンで評価すれば81となり、第一制限アミノ酸はいずれの場合もリシン(lysine)です。これは、精白米だけを食べた場合は、摂取したたんぱく質は全体の6割ないし8割しか利用されないことを意味しています。さらに、精白米に限らず、麺類、パン類など日本人が日常的に食べている穀類製品は、リシンが制限要素となってアミノ酸スコアが低いという特徴が見られます。一方、豆類のたんぱく質には、穀類に不足するリシンがアミノ酸評点パターンの値をかなり上回って含まれています。このため、米麦などの穀類と豆を組み合わせて食べると、不可欠アミノ酸のバランスが改善され、たんぱく質の利用効率が高まります。これがいわゆる「アミノ酸の補足効果」です。
大豆は「畑の肉」と言われるほどたんぱく質を非常に多く含んでおり、あずき、いんげんまめなどその他の豆もたんぱく質を多く含む食材と言えます。赤飯、あずき粥、豆ご飯など米に豆を混ぜて作ったご飯はもちろん、ご飯におかずとして豆料理を添えた食事は、米のたんぱく質を量的に補うとともにアミノ酸の補足効果により質的にも補うため、おいしいだけでなく栄養的にも理にかなった食べ方であり、先人の知恵と言うことができます。なお、アミノ酸の補足効果はご飯と豆類の関係に限ったことではないので、ご飯に肉類、魚介類など様々な食品をバランス良く組み合わせて食べることの重要性については、言うまでもありません。

豆類と代表的食品のたんぱく質の含有量
(可食部100g当たり 単位:g)
豆類と代表的食品のたんぱく質の含有量(可食部100g当たり 単位:g)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

脂質

脂質は1g当たり概ね9kcalと効率的にエネルギーを発生させることができるため、糖質とともにエネルギー源として重要であり、貯蔵脂肪となってエネルギーを貯める役割も果たしています。また、たんぱく質と同様、細胞膜などを構成する成分として必須であり、ビタミンAやDなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割もあります。
脂質の主な構成成分である脂肪酸は、分子の結合状態により、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別されます。不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに多価不飽和脂肪酸はn-6(又はω-6)系脂肪酸とn-3(又はω-3)系脂肪酸に分けられます。飽和脂肪酸は獣肉に多く含まれ、代表例はパルミチン酸、ステアリン酸などです。一価不飽和脂肪酸の代表例はオリーブ油などに多いオレイン酸です。また、n-6系脂肪酸の代表例としてはコーン油などに多いリノール酸を、n-3系脂肪酸の代表例としてはエゴマ油などに多いα-リノレン酸や魚に多いEPA、DHAなどをあげることができます。
体内で他の脂肪酸から合成できないために食物から摂取する必要がある脂肪酸は、必須脂肪酸と総称されますが、n-6系脂肪酸及びn-3系脂肪酸はこれに該当します。これらの脂肪酸は、それぞれ体内での働きが異なるため、摂取バランスが重要です。
脂質を摂り過ぎると、エネルギーの摂取過剰から肥満の原因となります。また、飽和脂肪酸を多く含む肉や油を過剰摂取すると、コレステロールや中性脂肪が増加し、動脈硬化の原因となります。一方、植物性の油に多い多価不飽和脂肪酸の一つであるリノール酸は、コレステロールを下げる効果がありますが、酸化されやすいため、摂り過ぎると体内でがんの原因といわれる過酸化脂質を生じます。
肉や油の使用が多いインスタント食品、ファーストフード、スナック菓子を好む最近の日本の若者は、脂質の摂り過ぎにより若い時から生活習慣病の危機にさらされていると言えるでしょう。欧米型の食生活で増えつつあるがんや心筋梗塞を予防するため、エネルギー必要量のうち脂質からの摂取量は25%程度が理想的と言われており、あずき、いんげんまめを始めとする「炭水化物を多く含むグループ」の豆は、糖質やたんぱく質が多い一方、脂質は乾燥豆で2%程度と極めて少ないため、脂質の過剰摂取回避のために活用すべき食品です。

豆類と代表的食品の脂質の含有量
(可食部100g当たり 単位:g)
豆類と代表的食品の脂質の含有量(可食部100g当たり 単位:g)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

一方、「脂質を多く含むグループ」の豆のうち大豆の脂肪酸組成は、パルミチン酸などの飽和脂肪酸が1割強、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸が2割、多価不飽和脂肪酸ではn-3系のα-リノレン酸が1割、n-6系のリノール酸が5割となっていて、摂取を抑制すべき飽和脂肪の割合は低く、健康に良いとされるn-3系脂肪酸も含んでいる一方、必須脂肪酸ながら酸化しやすいために過度の摂取は問題とされるn-6系のリノール酸が脂肪酸全体の半分を占めています。しかし、大豆を普通に食べている分には特に問題はなく、大豆製品である豆腐や味噌も水分が多く含まれているため脂質を摂り過ぎることはありません。しかし、大豆油を多く使う料理には、n-3系脂肪酸の多い魚を併せて食べるなど、脂肪酸組成バランスの良い脂質の摂り方が望まれます。
一方、落花生の脂肪酸組成は、パルミチン酸などの飽和脂肪酸が2割、オレイン酸などの一価不飽和脂肪酸が5割、リノール酸が3割と、大豆と比べてリノール酸の割合が低く、オレイン酸の割合が高くなっています。

ビタミン

ビタミンは、生物の生存に不可欠な微量栄養素のうち有機化合物の総称です。他の栄養素の働きを助ける酵素や、酵素の働きを助ける補酵素の役割を担っていて、絶えず消費されることから微量でも必要量をきちんと摂取する必要があり、不足すると色々な欠乏症が起こります。このため、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質、ミネラルと並んで五大栄養素のうちの1つに数えられています。
ビタミンに関する豆類全般の特徴としては、炭水化物や脂質のエネルギーへの転換やたんぱく質の分解・合成など体内で非常に重要な役割を担っているビタミンB群が豊富に含まれていることが特筆されます。その他のビタミンでは、ビタミンKを比較的多く含み、ビタミンEも若干含んでいますが、ビタミンA、C、Dはほとんど含んでいません。

ビタミンB1

〈炭水化物からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素〉
ビタミンB1(チアミン:thiamin) は、体内で糖質を分解してエネルギーを発生させる際、酵素の働きを助ける補酵素の役割を果たしています。このため、糖質を摂取してもビタミンB1が不足すると糖質をエネルギーとしてうまく利用できず、全身の倦怠感、手足の感覚障害、動悸が気になるなど脚気の初期症状が現れます。また、糖質は脳や神経に対する唯一のエネルギー源のため、ビタミンB1の不足などで十分にエネルギーが供給されないと、神経や脳の働きにも影響が現れます。
明治時代に、精白米中心の食事をしていた日本の船員や軍人に脚気が多発したのは有名な話ですが、現在でも、開発途上国では不十分な食事によるビタミンB1欠乏症が後を絶ちません。また、アルコールを多飲する欧米諸国では、これを主な原因としたビタミンB1欠乏症がみられ、眼球運動の麻痺や歩行運動失調、意識障害などを引き起こすウェルニッケ脳症(Wernicke's encephalopathy)や記憶喪失に代表されるコルサコフ症候群(Korsakoff's syndrome)が知られています。
ビタミンB1は、日本人の主な糖質摂取源であるご飯(精白米)、麺類、食パンなどにはあまり多く含まれていないため、不足しがちなビタミンです。特に、清涼飲料水とインスタント食品だけで食事を済ませるような食生活を続けていると、ビタミンB1不足に陥りがちです。さらに、糖質の多い食品やアルコールを多量に摂取した時にもビタミンB1の需要が高まり、不足しやすくなります。
このため、日頃からビタミンB1を含む食品を積極的に摂取するよう心がける必要があります。豆類には、ご飯(精白米)の約10倍のビタミンB1が含まれており、豚肉を始めとする肉類などとともにビタミンB1を多く含む食品の代表的存在です。毎日の食事に豆を積極的に取り入れれば、糖質を効率的にエネルギーとして利用することができるようになり、疲れにくい体づくりに役立ちます。なお、ビタミンB1は水溶性であるため、豆を下ゆでした際に全体の2割前後がゆで汁に溶出するので、効率的に摂取するためにはゆで汁も残さず利用することをお薦めします。

豆類と代表的食品のビタミンB1の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のビタミンB1の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

ビタミンB2

〈脂質の代謝と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素〉
ビタミンB2(リボフラビン:riboflavin ) は、脂質のエネルギー転換や細胞、皮膚、髪、爪などの再生を助け、成長を促進するとともに、粘膜を保護する働きも持っています。さらに、動脈硬化や老化を進行させ、発がん性もあると言われる過酸化脂質を分解し、その生成を防いでいます。不足すると脂漏性皮膚炎、口内炎・口角炎、角膜炎などの症状が現れますが、成長期の子供の場合は発育にも悪影響を及ぼします。
ビタミンB2は、脂質の摂取量が多い人ほど不足しやすいビタミンです。一方、ダイエットなど食事制限をしている場合も不足がちになりますが、肥満の原因である脂質をスムーズに代謝させる観点から、十分摂取するよう心がける必要があります。また、糖尿病になると、糖質だけでなく脂質の代謝も停滞し、脂質異常症、動脈硬化などの合併症につながる恐れがあるため、ビタミンB1とB2を同時に十分摂取する必要があります。
ビタミンB2は、肉類、乳製品、鶏卵、魚類など動物性食品に多く含まれていますが、豆類は植物性食品としてはこれを多く含んでおり、脂質を抑えながらビタミンB2を摂取する観点からも毎日の食事に積極的に取り入れたい食材です。なお、大豆は、ゆでた豆より納豆の方がビタミンB2をより多く含んでいます。

豆類と代表的食品のビタミンB2の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のビタミンB2の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

ビタミンB6

〈たんぱく質からのエネルギー産生と皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素〉
ビタミンB6は、ピリドキシン (pyridoxine)、ピリドキサール (pyridoxal) 、ピリドキサミン (pyridoxiamine) など同様な働きを持つ化合物の総称です。たんぱく質が体内で分解・再合成される際、足りないアミノ酸があれば他のアミノ酸から作り替えられますが、この際に不可欠なのがビタミンB6で、皮膚や粘膜の健康維持を助ける働きをしています。また、補酵素として脂質や炭水化物の代謝、神経伝達物質の合成などにもかかわっています。
ビタミンB6は腸内細菌により合成・供給されることもあって、一般的には欠乏状態になりにくいビタミンと言われていますが、その必要量はたんぱく質の摂取量と関係しており、また、抗生物質の使用などにより腸内細菌の活動が低下して不足することもあります。不足すると皮膚炎、貧血、免疫力低下などの症状が現れます。
ビタミンB6は魚類、肉類などに多く含まれているビタミンですが、豆類にも比較的多く含まれています。肉を多食するなどたんぱく質摂取量が多い人、発育期の子供、妊婦・授乳婦、肌荒れ・口内炎が気になる人などは、毎日の食事に豆料理を取り入れ、ビタミンB6の積極的な摂取に心がけると良いでしょう。

豆類と代表的食品のビタミンB6の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のビタミンB6の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

葉酸

〈赤血球の形成を助ける栄養素〉
葉酸(folic acid)は、ビタミンB群に属するビタミンで、ほうれん草の抽出物から発見されため、葉(folium)に含まれる酸(acid)という意味で葉酸と名付けられました。葉酸は、補酵素として核酸の合成に関与するため、細胞の分裂・成長に重要な役割を果たしており、特に赤血球の生成・成熟に欠かせないため、ビタミンB12などとともに「造血のビタミン」と呼ばれています。また、不可欠アミノ酸であるメチオニンは代謝の過程でホモシステイン(homocysteine)に変化しますが、これを再びメチオニンに戻すには、葉酸とビタミンB12が不可欠です。
葉酸が不足すると、造血機能に異常をきたして巨赤芽球性貧血などの原因となります。また、妊娠した女性で不足した場合は、胎児の神経管閉鎖障害や無脳症が発生する危険性があります。さらに、葉酸不足によりメチオニンのリサイクル過程が阻害されてホモシステインの血中濃度が高まると、これが LDLコレステロール(low density lipoprotein)と結びついて血管壁に付着し、動脈硬化の原因となります。
葉酸は植物全般に比較的多く含まれているビタミンで、豆類にも多く含まれています。妊娠の計画又は可能性がある女性や妊娠・授乳をしている女性などは、毎日の食事に豆料理を取り入れ、葉酸の積極的な摂取に心がけると良いでしょう。

豆類と代表的食品の葉酸の含有量
(可食部100g当たり 単位:μg)
豆類と代表的食品の葉酸の含有量(可食部100g当たり 単位:μg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

ミネラル(灰分)

ヒトの体は、体重の約95%が酸素(O)、炭素(C)、水素(H)及び窒素(N)の4つの元素でできていますが、ミネラル(mineral)はこれら以外の114種類の元素の総称で、栄養学では無機質あるいは灰分とも呼ばれています。これらの中でヒトの体内に存在し、栄養素として欠かせないものは必須ミネラルとされ、炭水化物(糖質)、脂質、たんぱく質、ビタミンと並んで五大栄養素のうちの1つとして数えられています。
現在、必須ミネラルとされている元素は16種で、そのうち1日当たり摂取量が概ね100mg以上の7種を多量ミネラル、100mg未満の9種を微量ミネラルと呼んでいます。

多量ミネラル 微量ミネラル
カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、ナトリウム、硫黄、塩素 鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト

さらに、「健康増進法」に基づいて、国民がその健康の保持増進を図る上で摂取することが望ましい栄養素として摂取量の基準を定めることとなっているミネラルは、上記の16種から硫黄、塩素及びコバルトを除いた13種類です。なお、このうちナトリウムは過剰な摂取が健康保持増進に影響を与えているもの、それ以外のミネラルは欠乏が健康保持増進に影響を与えているもの、という位置付けとなっています。
必須ミネラルの主な機能は、次の4つに大別することができます。

機能 該当する主なミネラル
骨や歯の材料となる カルシウム、リン、マグネシウム
筋肉、血液、神経などの成分となる 鉄、硫黄、リン、ヨウ素
体の機能の調整をする カルシウム、ナトリウム、カリウム、リン、ヨウ素を始めとするすべての必須ミネラル
栄養素のエネルギー転換などを促進する酵素となる マグネシウム、マンガンなど

ヒトの体に含まれるミネラルは、個々の元素として見れば比較的微量なものが多いのですが、その過不足によりさまざまな健康上の障害を引き起こします。
ミネラルには、食品の調理加工によって失われるものが多くあります。一方、食塩に含まれるナトリウムや食品添加物に使われるリンは、一般的には加工によって増加する傾向にあります。このため、インスタント食品や加工食品の利用が増えてきた最近の日本人の食生活には、カルシウム、カリウム、鉄などが不足する一方、ナトリウム(食塩相当量)の過剰摂取により、種々の弊害が起こってきています。

このような状況のなか、精白・製粉によってミネラルに富む種子の表層や子葉を搗いて除去し、胚乳のみを食べる米・麦などの穀類と比べ、種子全粒を丸ごと食べることができる豆類は、不足しがちなミネラルをバランスよく効率的に供給できる頼もしい食材と言うことができます。

カルシウム

〈歯や骨の形成に必要な栄養素〉
カルシウム(calcium)は、元素記号Caで表わされる金属元素です。成人では体重の1.5〜2%、およそ1kg前後とミネラルの中で最も多く含まれ、そのうち99%は主にリン酸塩などとして骨と歯を形づくる成分となり、残り1%は血液、筋肉、神経などの組織にイオンや種々の塩として存在し、細胞の情報伝達に関係するとともに、心臓の筋肉を収縮させて規則正しい鼓動を保ち、刺激に対する神経の感受性を鎮め、ホルモンの分泌や酵素の活性に関与するなど、生命維持に必要とされる多様な生理機能の調節を担っています。
カルシウムは体内で重要な役割を果たしているため、血液中の濃度は常に一定に保たれていますが、骨はそのためのバッファーとしての機能を持っています。すなわち、骨は「骨代謝」と呼ばれる新陳代謝を繰り返しており、古い骨が壊されて血液中にカルシウムが溶出することは「骨吸収」、血液中のカルシウムにより新たに骨が作られることは「骨形成」と呼ばれ、これらによりカルシウムの血中濃度と骨の強度をともに保つ仕組みとなっています。
食品に含まれるカルシウムは小腸から吸収されますが、すべて吸収されるわけではなく、未吸収部分は便として排泄されます。吸収率は成人で25〜30%程度と言われており、高齢になると低下します。吸収されたカルシウムは血液中に入り、血中濃度の維持と必要な骨形成に利用され、残りは尿として排泄されます。しかし、摂取量が不足して血中濃度が低下した状態になると、骨吸収による血液への溶出量が増加して不足分が補われます。その後、適切なカルシウムの摂取があれば骨吸収に見合う骨形成が行われて骨量が維持されますが、骨形成が骨吸収を上回る状態が長期にわたり継続すると骨量が低下し始め、これが進行すると骨密度が減少して骨が脆くなる骨粗鬆症を引き起こします。また、カルシウム不足は、高血圧、動脈硬化、認知障害、免疫異常、糖尿病、肥満、腫瘍、軟骨の変性や変形性関節症など様々な病気の原因となる可能性があると言われています。
なお、カルシウム不足は、食品からの摂取不足や腸からの吸収不良によって起こりますが、カルシウムの吸収にはビタミンDが深く関与しているため、ビタミンD不足が原因となってカルシウム不足となることもあります。また、骨に負荷(圧力)を加えると骨形成が促進されるため、適度な運動も骨を丈夫に保つために重要な要素と考えられています。
骨のカルシウム量は、20〜25歳頃までに増加のピークを迎え、それ以降は骨形成と骨吸収が平衡状態となってほとんど変化せず、40歳代後半頃からは骨形成が骨吸収に追いつかなくなるため、骨密度は加齢に伴って低下していきます。
カルシウムは、もともと日本人では不足気味のミネラルで、1人1日当たり摂取量は戦後の300mg前後から最近では500mg程度に達していますが、それでも十分な摂取量ではなく、日本人に足りない栄養素の代表的存在となっています。
ご飯やうどん、そばなどの麺類はカルシウムに乏しいことから、豆腐、味噌などを含めカルシウムに富む豆や豆製品をもっと利用することは、今後の食生活を考えるうえで、非常に重要なポイントです。

豆類と代表的食品のカルシウムの含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のカルシウムの含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

リン

〈歯や骨の形成に必要な栄養素〉
リン(phosphorus)は、元素記号Pで表わされる非金属元素で、成人では体重の1%程度、およそ0.5kg前後とカルシウムに次いで多く含まれています。そのうち約80〜85%はカルシウムやマグネシウムと結合して骨格や歯を形成する成分となり、残りは細胞膜を構成するリン脂質、核酸、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate; ATP)などの構成成分となって、筋肉、脳、神経、内臓などあらゆる組織に含まれ、さらにリン酸塩として血液中にも存在して、糖質や脂質の代謝、エネルギーの保存・利用、血液のpHを弱アルカリ性に保つための緩衝作用など重要な役割を果たしています。
食品として摂取されたリンは、小腸で吸収された後、血液により骨など必要な組織に運ばれますが、未吸収部分は便として排泄されます。また、健康な人では、吸収量に見合う量が尿として排泄されるため、リンが体の中に貯まることはありません。しかし、リンはカルシウムと密接な相互関係があり、過剰に摂取すると結果としてカルシウムの吸収を阻害するため、カルシウムとリンとの理想的な摂取バランスは、1:1ないし1:2程度と言われています。
リンは多くの食品に含まれている上、各種加工食品にリン酸塩が添加されていることも多いため、不足することはほとんど想定されず、むしろカルシウムとの相互関係において過剰傾向にあり、摂取過多が懸念されています。
豆類には、カルシウムとリンが概ねバランスのとれた形で含まれています。リンがカルシウムに比べて多い魚類や肉類などを食べる時は、豆類を併せて食べると良いでしょう。

豆類と代表的食品のリンの含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のリンの含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

マグネシウム

〈歯や骨の形成、体内酵素の正常な働き、正常な血液循環などに必要な栄養素〉
マグネシウム(magnesium)は、元素記号Mgで表わされる金属元素で、成人では体内に30g程度含まれています。そのうち60〜70%は骨、残りの大部分は筋肉や臓器中にあり、細胞外液と血液中にも少量含まれています。
マグネシウムは300種類以上の酵素反応に補酵素として働き、ほとんどすべての生合成反応や代謝反応に必須のミネラルです。また、カルシウムによる筋肉収縮作用の調整、カルシウムによる血管収縮と拮抗した血管弛緩作用による正常血圧の維持、カルシウムの骨・歯への沈着促進などカルシウムと対となって、その働きを制御する役割を果たしています。さらに、刺激による神経の興奮を鎮めて精神を安定させる働きも持っています。
マグネシウムは動植物全般に広く含まれているため、通常の食事をしている健康な人では不足することはあまりないと言われてきました。しかし、最近の日本人の1人1日当たりの平均的な摂取量は、成人男性で260mg程度、女性で230mg程度と「日本人の食事摂取基準」の推奨量をかなり下回る水準となっています。マグネシウムの摂取不足は、筋肉収縮異常、不整脈、心疾患、骨粗鬆症、神経疾患、精神疾患などの原因になると言われています。また、マグネシウムはカルシウムと対になって働くことが多いことから、相対的な不足とならないよう、摂取量はカルシウムの2分の1程度とするのが理想的と言われています。
マグネシウムは、ナッツ類、海藻類などのほか豆類にも多く含まれています。ご飯、パン、牛乳、肉類にはあまり含まれていないので、豆を始めとしたマグネシウムに富む食品を組み合わせて摂取することが重要です。また、牛乳などによりカルシウムを多く摂る人は、併せてマグネシウムもバランス良く摂るよう心がける必要があります。

豆類と代表的食品のマグネシウムの含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のマグネシウムの含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

カリウムとナトリウム

〈カリウムは体内の浸透圧を調整し、過剰なナトリウムを排出する栄養素〉
カリウム(potassium)は元素記号Kで表わされる金属元素で、成人の体内には120g〜160g程度含まれ、その98%は細胞内液、残りは細胞外液中に存在し、細胞内外の浸透圧を保ちながら水分や各種成分のやりとりを調節するなど生命を維持する上で重要な役割を担っています。特にナトリウムと拮抗的に働き、細胞内に入った過剰なナトリウムを排出する役割を担っています。また、筋肉に多く含まれ、筋肉の収縮を円滑にする働きがあります。
一方、ナトリウム(sodium)は元素記号Naで表される金属元素で、成人の体内には80g程度含まれ、骨や細胞外液中に多く存在し、カリウムと拮抗して体内の浸透圧調整に関与したり、体液を弱アルカリ性に保つための緩衝作用などの機能を果たしています。また、神経系の刺激伝達や筋肉の収縮にも関与するとともに、糖質、たんぱく質などの栄養素の消化吸収を促進する働きなども持っています。

豆類と代表的食品のカリウムの含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品のカリウムの含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

一般にナトリウムを過剰に摂取すると高血圧症を誘発すると考えられており、その主な原因としては、細胞外液中のナトリウム濃度の上昇により細胞外の浸透圧が高くなる結果、細胞内から細胞外に水が浸出して血液量が増え、血管内の圧力が高まるためと説明されています。「平成22年国民健康・栄養調査」によれば、30歳以上の日本人で「高血圧」と言われたことがある者の割合は男性37%、女性31%で、高血圧は日本人の国民病とも言うべき状況となっています。このため、食生活改善指導の一環として、食塩相当量の摂取を極力控えるとともに、ナトリウムの排出を促すカリウムを含む食品を積極的に摂取するよう強く勧奨されるようになり、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」ではカリウムの摂取に関する目標量(生活習慣病の一次予防を目的として当面達成すべき1人1日当たり摂取量の目標)が設定されています。
日本人の食生活では、ナトリウム(食塩相当量)の摂取量の過半は味噌、醤油などの調味料に由来していますが、伝統的な食品である野菜の漬物、海藻の塩蔵品、魚の塩蔵品・干物などからもナトリウムを多く摂取しがちです。近年、食習慣が変化するとともに、健康志向に即した減塩商品の開発・普及が進んだこともあり、漬物などからのナトリウム摂取量はかなり低下してきましたが、調味料に由来する部分の低減は大きく進んだとは言いがたい状況にあります。また、ナトリウムは、小麦製品(パン、麺類など)、肉類(ハム・ソーセージ、ベーコンなど)、乳類(チーズなど)にも多く含まれており、これら食品からのナトリウムの摂取は、塩味をあまり意識することがないだけに、ほとんど減少していません。さらに、元来、動物性、植物性とも未加工の自然食材にはカリウムが豊富に含まれ、ナトリウムはあまり含まれていませんが、近年、インスタント食品、スナック菓子など加工食品への依存度が高まる中、これら食品は製造過程でカリウムの減耗があるうえ、概して濃い味付けにより食塩相当量が多くなっていることも、ナトリウム過剰とカリウム不足の要因の1つと考えられます。なお、ナトリウム含有量から食塩相当量を得るには、換算係数2.54を乗じます。
カリウムは、野菜、果物を始め幅広い食品に含まれていますが、中でも豆類にはカリウムが大変多く含まれている一方、ナトリウムはほとんど含まれていません。前述のようにパン、麺類、加工食品などにはナトリウムが多く含まれていることから、毎日の食事に野菜や果物とともに豆類を取り入れることにより、カリウムをより多く摂取することが重要です。

〈赤血球を作るのに必要な栄養素〉
鉄(iron)は、元素記号Feで表わされる金属元素で、成人では体内に3〜4g存在しています。体内の鉄の約70%は酸素の運搬や酵素として働く機能鉄で、その大部分は赤血球のヘモグロビン(hemoglobin)の構成成分となって体内における酸素の運搬・供給にかかわり、その他の機能鉄は血液中の酸素を筋肉に取り入れるミオグロビン(myoglobin)や各種酵素の構成成分として存在しています。一方、貯蔵・輸送に使用される貯蔵鉄は、たんぱく質と結合したフェリチン(ferritin)や細胞に沈着したヘモシデリン(hemosiderin)として肝臓、脾臓、骨髄、筋肉などに存在し、また、血清鉄として血清中にも存在します。
鉄が不足すると、めまい、息切れなど貧血の症状が現れるほか、運動機能や免疫機能の低下を招くことがあります。鉄は、食品から摂取しても吸収率は平均で8〜10%と極めて低いために欠乏しやすく、特に急速に成長する乳幼児や妊婦・授乳婦を始め女性にとっては欠乏しないよう気をつけた方が良いミネラルです。また、機能鉄が不足しても不足分は貯蔵鉄から補われるので、貧血などの症状は貯蔵鉄が不足して初めて現れることとなります。このため、具体的症状がなくても、潜在的な鉄欠乏症の人はかなり多いと言われています。
食品に含まれている鉄には、有機物と結合して二価鉄(Fe2+)となったヘム鉄(heme iron)と三価鉄(Fe3+)の非ヘム鉄(non-heme iron)があり、前者はヘモグロビンやミオグロビンとして肉、レバー、赤身魚など動物性食品に多く含まれているのに対し、後者は植物性食品に含まれ、特に豆類、種実類、海藻類などに多く含まれています。体内での吸収率は、ヘム鉄が15〜25%、非ヘム鉄が2〜5%と、前者の方が大幅に効率的ですが、後者もビタミンCやたんぱく質と併せて摂取することにより吸収率が向上すると言われています。鉄以外の栄養素も含めた総合的な栄養バランスの観点からも、鉄の供給源を特定の動物性食品に求めるのではなく、肉類、魚類、野菜類、豆類などを組み合わせて効率よく鉄を摂取することが重要です。

豆類と代表的食品の鉄の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品の鉄の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

亜鉛

〈たんぱく質、核酸の代謝に関与して健康の維持に役立つ栄養素〉
亜鉛(zinc)は元素記号Znで表わされる金属元素で、成人では体内に2g程度存在しています。DNAやたんぱく質の合成などに関与する各種酵素の構成成分となって、新たな細胞作りに関与するため、成長・発育や新陳代謝に不可欠なミネラルです。また、味覚を正常に保ち、免疫機能、ホルモンの合成・分泌などにもかかわっています。
亜鉛が不足すると、子供では成長・発育が遅れ、成人では肌荒れの発生や傷の治りが遅くなるなど新陳代謝に影響が出てきます。また、食欲不振や味を感じない味覚障害の原因となったり、免疫機能が低下して風邪にかかりやすくなると言われています。
亜鉛は貝類に多く含まれていますが、豆類も肉類、種実類、穀類などと並んで亜鉛を多く含む食品です。

豆類と代表的食品の亜鉛の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品の亜鉛の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」

〈赤血球の形成、体内酵素の正常な働き、骨の形成を助ける栄養素〉
銅(copper)は元素記号Cuで表わされる金属元素で、成人では生体内に80mg程度存在し、主に筋肉、骨、肝臓などに分布しています。銅は酵素の構成成分となって種々の生体内反応の触媒として機能しており、貯蔵鉄の移動にかかわってヘモグロビンの生成を助ける造血作用、骨の角質の形成促進による骨の強化、髪や皮膚の色素の生成など重要な働きを担っています。
健康な人では、日常の食生活で銅不足となることはほとんどありませんが、銅と亜鉛は一方の摂取量が多すぎると他方の吸収が悪くなることから、亜鉛を過剰に摂取した場合や乳児の持続的な下痢、重度の吸収不良などにより欠乏することがあり、その場合、鉄を投与しても反応しない貧血、骨の異常などの症状が現れると言われています。
亜鉛と同様、銅も貝類に多く含まれていますが、豆類にも多く含まれています。

豆類と代表的食品の銅の含有量
(可食部100g当たり 単位:mg)
豆類と代表的食品の銅の含有量(可食部100g当たり 単位:mg)グラフ

資料:「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」