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今後の食生活への豆活用

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食生活改善推進の要となる豆

近年、日本では食生活の変化などから糖尿病や心筋梗塞などの疾患が、成人だけでなく若者にまで増加しています。このため、若いうちから食生活の改善などにより健康で長生きできる身体を作っていけるよう、生活習慣病対策は、健康対策の中でも特に力を入れて推進されています。
生活習慣病対策では、適度な運動や睡眠・休養、禁煙、節酒などが推奨されていますが、やはり中核となる対策は栄養を適正に摂取していくための食生活の改善です。具体的には、野菜・果物やカルシウムに富む食品の摂取量を増やすとともに、食塩相当量の摂取量の減少とカリウム摂取量の増加、食物繊維摂取量の増加、さらに脂肪エネルギー比率の減少と飽和脂肪酸摂取の抑制などがポイントとなっています。豆類は、これらの食生活改善を進めるに当たり、要となり得る非常に有用な食材と言うことができます。
適正なエネルギー摂取量を確保しつつ、脂肪エネルギー比率を適正な水準にしていくためには、過剰気味の脂質の摂取を減らして糖質の摂取を増やすことになりますが、このためには世界的にも健康的な食事スタイルとして注目されつつある米を中心とした日本の伝統的な食事スタイル「和食」の良さを再認識していく必要があります。「和食」の最大の特徴は、主として炭水化物エネルギーの供給源となる「主食」、主としてたんぱく質や脂質の供給源となる「主菜」、主食及び主菜に不足するビタミン、ミネラル、食物繊維などを補う「副菜」という料理の区分を基本としつつ、「一汁三菜」という形式により多様な食品を組み合わせることにより、自ずと必要な栄養素をバランスよく摂ることができることです。
豆類は、もともと魚介類、野菜類、海藻類などとともに、「和食」を構成する主要食材の一つで、大豆は主に主菜として、その他の豆類は主に副菜として利用されてきましたが、米と豆を併せて摂取することは、栄養学的な観点や生活習慣病対策という新たな視点からも意義があります。すなわち、豆類により精白米に不足する栄養素であるビタミンB1を始めとするビタミン類やカルシウム、カリウムなどのミネラル類を効率的に補充し、食物繊維などの機能性成分を豊富に摂取することが可能となります。また、豆類は肉類との一部代替により脂質全体や飽和脂肪酸の摂取を抑制しつつ、主食となる米・麦のたんぱく質のアミノ酸組成上の欠点を補い、必要なたんぱく質を効率的に確保することにも寄与します。
米を中心として、豆類を始め野菜類、果実類、魚介類、さらに適量の肉類、卵類、乳製品類など多様な食材を組み合わせ、できるだけ「和食」の形式に準じたおかず構成の食事になるよう心がけるとともに、今や欠かすことができなくなった加工食品、調理食品などについても、過度に依存することなく原材料、栄養などを吟味して食事に上手に取り入れていくことは、生活習慣病が少なかった昭和40~50年代の日本の食生活の良いところを現代風にアレンジした、いわば「21世紀の新しい日本型食生活」と言えるでしょう。

食生活に豆を上手に活用していくためのヒント

豆類は、栄養面で優れた特性を有するうえ、味に癖がなく、一緒に調理した食材のうま味を吸って、その美味しさを実感させてくれるため、様々な食材との相性が非常に良いという特徴を持っています。このため、世界では、豆は肉、魚介、野菜などとの組み合わせにより、煮物、スープ・シチュー、焼物、揚物、サラダ、肉・魚料理の付け合せなど様々な料理に使われています。また、乾燥豆をゆでて粒のまま使うだけではなく、潰してマッシュ、ペーストあるいは液状にして利用することも多く、このような利用に便利なよう、流通形態も皮剥き、半割り、粉末状など多様です。
一方、日本では、昔から豆は餡や和菓子、煮豆など甘い味付けをして食べるものという先入観が強いこともあり、赤飯、いとこ煮、五目豆など伝統的豆料理を除くと、世界で見られるような多様な豆の使い方にはまだなじみが薄い状況にあります。そのうえ、ライフスタイルの変化に伴い、かつてのように家庭で料理に手間暇をかける余裕がなくなってきたことを背景に、インスタント食品、冷凍食品、レトルト食品、調理・半調理食品、さらに「○○の素」といった合わせ調味料など多様な食品が広く利用されるようになり、家庭料理は短時間で簡単に作れるものが主流となってきています。このような状況の中で、豆は健康に良いことが十分に分かっていても、水に長時間浸けて戻し、さらに下ゆでをする必要があるため、調理に手間がかかる面倒な食材というイメージから敬遠され、食卓に供される機会が少なくなってきています。
しかし、乾燥豆は、賞味期限が常温で通常2年間と長期保存が可能なため、常備しておき、時間に余裕がある週末などに一度にまとめてゆでたうえ、小分けにして冷凍保存し、使いたい時に電子レンジで解凍すれば、まな板も包丁も使わず、そのまますぐに使うことができる便利な食材です。また、熱湯を使って短時間で戻したり、魔法瓶や保温・保冷用ステンレスボトルで手間をかけずにゆでるなどの裏技を活用すれば、思いのほか簡単に下ゆですることも可能です。さらに、最近では、スーパーの店頭にそのまま料理に使える豆の水煮・蒸煮の缶詰やビニールパック製品が多く並ぶようになってきています。
「豆料理」のレシピをあまり知らないため、使うことを躊躇したり、作ってもワンパターンになってしまうという声をよく聞きますが、ことさらいわゆる「豆料理」を目指すのではなく、カレー、シチュー、野菜炒め、ハンバーグ、炊込みご飯、サラダなどいつもの家庭料理や市販のレトルトカレー、パスタソース製品などに、ゆでて冷凍保存しておいた豆や市販の水煮・蒸煮製品を加えて簡単なアレンジを施すだけでも、食物繊維、鉄を始めとして不足しがちな栄養成分が補われ、美味しく格段に栄養バランスの良い食事に変化します。
なお、乾燥豆のたんぱく質含有率は、大豆35%、あずきやいんげんまめで20%程度と肉や魚に匹敵するほど高いため、豆の煮汁にはうま味成分となるアミノ酸が溶け出しているうえ、ビタミンB群など栄養素の一部や機能性成分のポリフェノールも溶け出しており、栄養に富むだし汁として利用することができます。このため、豆の栄養を余すことなく利用するためには、下ゆで時の煮汁や水煮缶の液汁を料理に利用することをお薦めします。
さらに、豆は、料理としてだけではなく、餡を使った和菓子や各種の豆菓子としても摂取することができます。豆を原料にして作る餡は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールに富むという豆の栄養特性を概ね維持しており、健康的な食べ物ということができます。また、甘い和菓子は高エネルギーと思われがちですが、豆、米などの炭水化物主体の材料を主原料としているため、バター、生クリームなど炭水化物の2.25倍ものエネルギーがある脂質を主体とした材料をふんだんに使用して作る洋菓子と比べると、同じ重さなら相対的にかなり低エネルギーと言うことができます。菓子のエネルギーは個別の製品により大きさ、材料とその配合などが異なるため、和菓子と洋菓子を一概に比較することはできませんが、例えば、「日本食品標準成分表」に記載されている100g当たりエネルギー量は、大福もちが235kcalなのに対し、ショートケーキは344kcalです。和菓子は気分転換や癒し効果など、心の健康を得るためにも重要な役割を果たすものであり、適時・適量で楽しんでいる限り、ことさらエネルギーの摂り過ぎを気にする必要はないでしょう。
これからの健康増進のため、特に次代を担う若者や子供たちには、様々な豆料理や和菓子など何らかの形で、毎日の食生活に豆の栄養を活かす習慣を身につけていただきたいと考えます。