本文へスキップします。

H1

健康づくりに果たす豆の役割

コンテンツ

食生活指針や国民健康づくり運動なども踏まえ、豆類の摂取が健康づくりに果たす主な役割を総括すると、以下のとおりです。

  • 豆は、「日本型食生活」に関する提言などで示されたエネルギー産生栄養素バランス(PFC比率)の適正化に役立ちます。
  • 豆は、ビタミンB1を始めとするビタミンB群の供給源となって、3大栄養素からのエネルギー産生やこれらのスムーズな分解・合成に関与し、健康維持に役立ちます。
  • 豆は、体の様々な調節機能を十全に発揮させるために必要な種々のミネラルを広範に含み、これらの包括的な供給源となります。特に「食生活指針」や「健康日本21」で特記されたように、不足しがちなカルシウムの重要な供給源となります。また、鉄、カリウム、亜鉛も豊富に含み、これらの効率的な供給源となります。
  • 豆は、様々な食品の中で最も多く食物繊維を含む食品の一つであり、その最も効率的な供給源となります。
  • 豆には、ポリフェノールを多く含むものがあり、その抗酸化作用により健康に様々な悪影響を及ぼす活性酸素を除去する効果が期待されます。

豆はPFC比率の適正化に役立つ

日本の昭和50年代のバランスの取れた食事を参考に食生活を見直そうと昭和55年(1980年)頃から提唱されてきた「日本型食生活」を始め、「健康づくりのための食生活指針」(1985年 厚生省策定)、「食生活指針」(2000年 文部省、厚生省、農林水産省策定)、「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」(2000年 厚生省策定)など、これまで国が推進してきた食や健康に関する指針、国民運動などにおいて、脂質(特に動物性脂質に由来する飽和脂肪酸)の摂り過ぎに注意することが強調されてきたのは、欧米型の食生活で増えつつあるがんや心筋梗塞などの生活習慣病を予防するためです。
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(以下、「食事摂取基準」と略す)においては、エネルギー産生栄養素バランス(PFC比率)の目標量は、たんぱく質13~20%、脂質20~30%(うち飽和脂肪酸は7%以下)、炭水化物50~65%と設定されています。健康を維持するためには、PFC比率をこの範囲に収めることが望ましく、特に脂肪エネルギー比率については従来から25%程度が理想的と言われてきました。しかし、日本人のPFC比率の推移を見ると、食生活の欧米化の進展に伴い炭水化物エネルギー比率が低下する一方、脂肪エネルギー比率が増加傾向にあり、最近では特に若年層において平均値が目標量の上限に近づきつつあり、一部の性・年齢階層ではこれを超える状況も見られます。このため、理想的なPFC比率を保つ観点から、脂質の摂取を抑制しつつ、穀類などから炭水化物を適切に摂取していくことが重要です。
あずき、いんげんまめを始めとする「炭水化物を多く含むグループ」の豆類は、米、麦などと相性の良いアミノ酸組成を持つ植物性たんぱく質を豊富に含む一方、脂質をほとんど含まない(ゆで豆ベースで1%程度)ため、これらを使った豆料理や豆製品を毎日の食事に取り入れれば、肉や乳製品への過度の依存を抑えつつ、たんぱく質を効率的に摂取するとともに、脂質全体及び飽和脂肪酸の摂取量の低減に役立ちます。このため、豆は米とともに、バランスの取れた食生活を進めていくための要となる食品と言うことができます。

      
男女・年齢階層別の脂肪エネルギー比率の現状と目標量
男女・年齢階層別の脂肪エネルギー比率の現状と目標量 グラフ
資料:「平成24年国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  1. 目標量は緑色の帯で示した範囲である。
  2. グラフ中の数値は、平成24年の脂肪エネルギー比率(平均値)である。

豆は不足しがちなビタミンを補う

ビタミンは、必要量は微量ですが、様々な栄養素の働きを助け、体の調子を整える大事な役割を果たしています。
特に、ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変えるために必要な重要ビタミンですが、その摂取量は、食事摂取基準の推奨量と比べると、性別、年齢を問わず不足気味で、特に糖質の多い飲料を多飲しがちな若い世代で不足が顕著です。ビタミンB1の最近の1人1日当たり摂取量(平均値)と食事摂取基準の推奨量との差は、小学校高学年から中高年に至るまで、総じて0.3~0.4mg程度ですが、例えば、農林水産省・厚生労働省が作成した「食事バランスガイド」における副菜1つ(sv)分に当たるいんげんまめ(ゆで)を70g使用して作った料理を追加すれば、豆由来のビタミンB1は0.13mgで、1食当たりの不足分をほぼカバーすることが可能です。かつて日本人は、このように精白米に不足するビタミンB1を豆で補ってきたのです。
さらに、豆には、ビタミンB1と同様にエネルギー代謝や物質代謝に欠かせないビタミンB2、B6なども豊富に含まれており、不足しがちなビタミンの補給源として役立ちます。

ビタミンB1の1人1日当たり摂取量(平均値)と推奨量
ビタミンB1の1人1日当たり摂取量(平均値)と推奨量 グラフ
資料:「平成24年国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  1. 男女・年齢階層別に平成24年の1人1日当たり摂取量(平均値)及び推奨量から不足分(グレー部分)を示した。
  2. グラフ中の数値は、摂取量(平均値)及び推奨量からの不足分である。

豆は不足しがちな各種ミネラルをまとめて供給する

ミネラルは、体の機能の維持・調節に欠かせない栄養素です。体に必要なミネラルには多くの種類があり、必要量はそれぞれ微量ですが、不足すると様々な症状が現われます。

カルシウム

日本人に足りない栄養素の代表的存在は、健康な骨や歯を作るために不可欠なカルシウムです。豆類や納豆、豆腐などの豆製品もカルシウムに富む代表的食品の一つであり、カルシウム摂取源として重要です。カルシウムの最近の1人1日当たりの摂取量(平均値)と食事摂取基準の推奨量との差(不足分)は、中学生から中高年に至るまで、総じて200~300mg程度となっています。

カルシウムの1人1日当たり摂取量(平均値)と推奨量
カルシウムの1人1日当たり摂取量(平均値)と推奨量 グラフ
資料:「平成24年国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  1. 男女・年齢階層別に平成24年の1人1日当たり摂取量(平均値)及び推奨量から不足分(グレー部分)を示した。
  2. グラフ中の数値は、摂取量(平均値)及び推奨量からの不足分である。

赤血球の構成要素となって体の隅々まで酸素を運ぶ役割を果たす鉄も、吸収率が極めて低いため、欠乏しやすい栄養素です。特に、女性ではライフステージを通じて不足しがちです。鉄の最近の1人1日当たりの摂取量(平均値)と食事摂取基準の推奨量との差(不足分)は、男性では18歳未満の各年齢階層で1~4mg、幼児を除く女性で3~8mg程度となっています。

カリウム

日本人は食塩相当量の過剰摂取傾向があるため、ナトリウムの排泄を促して血圧を下げる働きがあるカリウムを積極的に摂取する必要がありますが、男女ともに特に10歳代後半から40歳代までの年齢階層でカリウム不足が顕著となっており、この年齢階層の最近のカリウムの1人1日当たりの摂取量(平均値)と食事摂取基準の目安量との差(不足分)は、男性では400mg前後、女性では100~150mg程度です。食事摂取基準では、カリウムに関しては、目安量のほかに、生活習慣病の発症を未然に防ぐ一次予防の観点から当面の目標とすべき1人1日当たりの摂取量として「目標量」も設定されており、前記の年齢階層の1人1日当たりの摂取量(平均値)と目標量との差(不足分)は、男性で600~860mg、女性で600~750mg程度となっています。

カリウムの1人1日当たりの摂取量(平均値)と目標量
カリウムの1人1日当たりの摂取量(平均値)と目標量 グラフ
資料:「平成24年国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  1. 男女・年齢階層別に平成24年の1人1日当たり摂取量(平均値)及び目標量から不足分(グレー部分)を示した。
  2. グラフ中の数値は、摂取量(平均値)及び目標量からの不足分である。

亜鉛

たんぱく質の合成など細胞の新生に関与している亜鉛は、欠乏すると抜け毛・肌あれ、爪の障害などが現われますが、特に10歳代後半以上の女性で欠乏傾向にあり、最近の1人1日当たりの摂取量(平均値)と食事摂取基準の推奨量との差(不足分)は2~3mg程度となっています。
豆の摂取は、このようなミネラル不足に対する非常に有効な対応策となります。例えば、「食事バランスガイド」における主菜1つ(sv)分に相当する納豆1パック(40~50g)、又は副菜1つ(sv)分に相当するいんげんまめ(ゆで)を70g使用して作った料理には、いずれにも共通してカルシウムが40mg程度、鉄が1.4mg程度、カリウムが300mg程度、亜鉛が0.8mg程度含まれており、普段の食事に追加すれば、これらミネラルの概ね1食分の不足量を一度にまとめて補うことができます。

豆は食物繊維不足に応える

食物繊維は、抗便秘作用や血清コレステロール値及び血糖値の改善効果が認められ、肥満防止や心疾患、動脈硬化症、糖尿病、腸疾患などの生活習慣病予防に効果があることが明らかにされており、これを十分に摂取することは生活習慣病予防対策の重要な柱の1つされ、食事摂取基準でも生活習慣病の一次予防を目的とした「目標量」が設定されています。
日本古来の食生活では、食物繊維は十分に摂取されていましたが、近年の食生活の欧米化に伴い摂取量は減少傾向にあり、中学生以上の年齢階層では1人1日当たりの摂取量(平均値)が、男女とも食事摂取基準の目標量を下回っており、その差は2~7g程度となっています。
このような現状のもと、多くの食品の中で最も効率的に食物繊維を摂取できる豆類を毎日の食事に積極的に取り入れれば、生活習慣病の予防に大いに役立つと考えられます。上記の食事摂取基準の目標量と実際の摂取量(平均値)との差分を豆で解消するには、例えば、ゆでた金時豆1粒には約0.22gの食物繊維が含まれているので、1日に9~32粒(15~52g)程度を追加的に食べれば良いという計算になります。

食物繊維の1人1日当たりの摂取量(平均値)と目標量
食物繊維の1人1日当たりの摂取量(平均値)と目標量 グラフ
資料:「平成24年国民健康・栄養調査」、「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
  1. 男女・年齢階層別に平成24年の1人1日当たり摂取量(平均値)及び目標量から不足分(グレー部分)を示した。
  2. グラフ中の数値は、摂取量(平均値)及び目標量からの不足分である。

豆のポリフェノールが持つ抗酸化力に期待

体内で発生して健康に悪影響を及ぼす活性酸素を除去する抗酸化成分の積極的摂取は、生活習慣病予防の観点から、血中コレステロールの低下、高血圧の予防など様々な健康増進効果が期待できると考えられています。
豆には強い抗酸化活性を示す種や品種銘柄があり、その源泉は主に各種ポリフェノールによるものと考えられています。近年、米国農務省(USDA)により種々の食品の抗酸化力測定結果のデータベースが作成され、豆類はナッツ類、ベリー類、赤ワインなどとともに最も抗酸化力が強い食品群の1つであることが分かっており、豆のポリフェノールによる健康増進効果への期待が高まっています。
ただし、抗酸化活性測定値の高低とヒトに対する健康増進効果との間には必ずしも明確な相関関係があるわけではないとの指摘もあり、豆のポリフェノールについても、個別具体的な健康増進効果のさらなる解明が待たれます。