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あずきの栽培方法 ― 総論

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あずき-産地における栽培概要-総論

品種タイプと作型

あずきは、豆類の中でも生育に際して環境条件からの影響を受けやすい作物で、栽培に当たっては、地域の気象条件や栽培時期に適した品種タイプとそれに応じた作型を選ぶ必要があります。あずきの品種は、温度や光に対する感受性の違いにより、次の3つのタイプに分けることができます。

夏アズキ型品種

生育期間中の日平均気温の累積値(積算温度)が一定レベルに達すると開花が始まる性質(感温性)を持ち、沖縄を除く全国で栽培することができる品種です。本州では春(4月~5月上旬)に種を播いて夏(8月~9月上旬)に収穫します。あずきの最大の産地である北海道の品種もこのタイプに属しますが、寒地の気象条件に合わせて5月中下旬に種を播き、9月~10月に収穫します。

秋アズキ型品種

日長が一定時間以下になると開花が始まる性質(短日感光性)を持ち、夏(6月~7月)に種を播き、秋(9月下旬~11月上中旬)に収穫する品種で、主に西日本(近畿から九州)で栽培されています。

中間型品種

夏アズキ型品種と秋アズキ型品種の中間の性質を持つ品種で、初夏に種を播くのに適しており、中部地方の山間部や東北地方を中心に栽培されています。

これらの品種タイプと栽培地域により作型を類型化すると、おおよそ次のとおりです。

あずきの品種タイプ・地域別作型類型 あずきの品種タイプ・地域別作型類型-夏アズキ(北海道)-夏アズキ(東北~九州)-秋アズキ(東北~九州)-中間型(東北等)
注:同じ作型でも産地により具体的な作業適期は異なるため、複数地域の例を参考にして模式的に示していることに留意。

気象条件に適していないタイプの品種あるいは作型を用いた場合、十分な成果が得られないことがあります。例えば、北海道で育成された夏アズキ型品種を温暖地で栽培すると、育成地より日平均気温が高いことから短い日数で開花に必要な積算温度に達し、主茎が十分成長しないうちに開花期を迎えるため、地域の一般的な品種と比べ収量・品質とも劣ることが多いといわれています。
  これと同様に、温暖地において地域在来の夏アズキ型品種を秋アズキの作型で栽培(=遅播き)した場合も、生育期間が短縮されるため、生育不良となることがあります。
  一方、秋アズキ型品種を夏アズキの作型で栽培(=早播き)した場合は、短日条件となる8月下旬頃まで開花しないため、草自体は大きく成長しても、成熟が遅れて着莢不良となる場合があります。

品種選定

具体的な品種選定に当たっては、都道府県で奨励品種、優良品種、推奨品種等が定められている場合はそれを使用し、特段の定めがない場合はできるだけ周辺地域で栽培されている品種を使用するのが良いでしょう。また、近年、耐病性、耐冷性等に優れた品種が育成されているので、地域の病害発生状況や気象条件等を考慮して品種を選定します。

道府県の優良品種等指定状況
道府県 品種名 主要特性
北海道 サホロショウズ 早生、良質
エリモショウズ 中生、耐冷、良質、多収
きたのおとめ 中生、耐冷、良質、落葉病・萎凋病抵抗性
しゅまり 中生、良質、落葉病・茎疫病・萎凋病抵抗性
きたろまん 早生、耐冷、多収、落葉病、萎凋病抵抗性
きたあすか 中生、、耐冷性やや弱、大粒、多収、落葉病、茎疫病、萎凋病抵抗性
アカネダイナゴン 中生、大粒
とよみ大納言 中生、極大粒、落葉病・萎凋病抵抗性
ほまれ大納言 中生、加工適性優、落葉病・萎凋病抵抗性
きたほたる 中生、良質、白小豆、落葉病・萎凋病抵抗性
府県 青森県 大納言 晩生、良質
岩手県 岩手大納言 中生、大粒
紅南部 中生、良質
ベニダイナゴン 早生、大粒、ウィルス病抵抗性、晩播適応性
山形県 ベニダイナゴン 早生、ウィルス病抵抗性
福島県 大納言 中生、大粒
赤小豆 晩生、晩播適応性
新潟県 ときあかり 大粒、良質、落葉病・萎凋病抵抗性
長野県 中納言 晩生、良質、晩播適応性
京都府 京都大納言 晩生、良質、極大粒
新京都大納言 晩生、良質、極大粒、ウィルス病抵抗性
兵庫県 白雪大納言 白小豆、晩生、良質、極大粒
岡山県 新備中大納言 晩生、良質、極大粒

ほ場準備・施肥

排水良好で保水力のあるほ場を選び、耕起・砕土を行います。あずきは酸性を非常に嫌う作物であるため、酸性土壌の場合は石灰質肥料により酸度矯正を行います。なお、あずきの生育に最適なpHは約6といわれています。施肥量は、ほ場の肥沃度、土性、品種等により異なりますが、一般的には次のとおりで、通常は全量を基肥として施用します。

あずきの一般的な施肥量(10a当たり・成分量)
N(窒素) P(燐酸) K(カリ)
4.0kg 18.0kg 8.0kg
寒冷地 3.6kg 15.0kg 12.0kg
3.0kg 10.0kg 8.0kg

播種

播種時期は、品種のタイプ・早晩性や晩霜・初霜、台風来襲の時期など地域の気象条件を考慮して決めます。最も一般的な播種時期は、北海道では5月中下旬、都府県では夏アズキで4月~5月上旬、秋アズキで6月~7月ですが、都道府県の耕種基準など各種資料に記載されている地域別の品種・作型と具体的な播種期を整理すると次のとおりで、地域によってかなりの差異がみられます。
  なお、都府県の夏あずき型栽培は、品質面での問題もあり、最近ではあまり行われていないようです。

地域別に整理したあずきの品種・作型と播種期
地域 品種・作型 播種期
北海道 道南 5月中旬
道央 5月中旬(高温障害回避のため、6月上旬播きも行われる。)
道東・道北 5月下旬
東北 青森県 中間 5月中旬~6月上旬
岩手県 6月上旬~下旬
秋田県 5月下旬~6月上旬
山形県 6月上旬~7月上旬
関東 茨城県 4月中旬~5月上旬
5月中旬~6月下旬
千葉県 6月上旬~中旬
東京都 7月上旬
栃木県 7月上中旬
群馬県 5月中旬
6月中旬
東山 長野県 6月上旬~中旬
東海 静岡県 5月上旬~下旬
北陸 新潟県 6月下旬~7月中旬
石川県(珠洲) 7月中旬
近畿 京都府 7月中旬
兵庫県(丹波) 7月中旬~下旬
中国
四国
岡山県(井笠) 4月上旬~下旬
7月中旬~下旬
広島県 6月下旬~7月上中旬
山口県 4月下旬~5月上旬
6月中旬~下旬
九州 熊本県 4月上旬~中旬
7月上旬~中旬
大分県 4月上旬~中旬
7月上旬~下旬

栽植様式は、最も標準的には以下のとおりですが、地域によってはこれとかなり異なる場合もあります。

あずきの標準的な栽植様式
条間 株間 播種粒数/1株 株数/10a 播種量/10a 覆土
60~70cm 10~20cm 2~3粒 約8,000株 2~6kg程度* 3cm程度

*栽培する品種の粒の大きさ(百粒重)により差が大きい。

中耕・除草・培土

除草と土壌の通気性・保水力の改善や倒伏防止のための培土を兼ねて、播種後20~30日頃からおよそ10日間おき、2~3回にわたり中耕を行います。中耕作業は、根を傷めないよう、開花期前までに終了させます。

病害虫防除

あずきは、病害虫により収量、品質両面で被害を受けやすい作物です。薬剤による防除が必要な主要病害虫は以下のとおりです。なお、病害虫の種類、発生時期等は地域によって異なるため、薬剤散布による防除を行う場合は、地域ごとに定められた防除指針等に従い、あずきが適用作物となっている登録農薬を使用して適時・適切に実施してください。

あずきの主要病害虫
区分 防除対象主要病害虫
病害 アズキモザイク病、さび病、たんそ病、菌核病、灰色かび病等
虫害 アズキノメイガ*、カメムシ、ハダニ、アブラムシ(ウィルス媒介昆虫)等
*フキノメイガとする資料も多いが、最近の昆虫分類に従い、アズキノメイガとした(他のページも同様)。

収穫

収穫は、地域や栽培規模などに応じて、次のような様々な方法により行われています。

手摘み収穫体系

あずきは同一株内でも莢の成熟が斉一ではないため、一斉収穫は行わず、収穫時期を数回に分けて熟した莢から順に手で摘みとって収穫する方法で、最後まで手摘みを行う場合と、手摘みによる熟莢が全体の7~8割に達した段階で株ごと収穫して未熟粒を乾燥させる場合があります。脱粒は、莢ごと乾燥させた後に行います。この収穫方法は、都府県の小規模栽培で行われています。

ニオ積み収穫体系

熟莢率が70~80%に達する成熟期以降に、刈り払い機、ビーンハーベスタ等を用いてあずきの株を刈り倒し、あるいは人力で株ごと抜き取り、地干し、島立て等により茎葉水分を十分に下げてから、収穫した株をニオ積み、杭掛け、架(はさ)掛け等と呼ばれる方法で集積して2~3週間自然乾燥させ、その後、ビーンスレッシャで脱粒する方法で、北海道、都府県を通じてみられる収穫体系です。
(注)ビーンハーベスタ:刈取り株をまとめて一定間隔でほ場に落下させる機械。

ピックアップ収穫体系

熟莢率が100%に達する完熟期以降に、ビーンハーベスタ、ビーンカッタ等を用いてあずきの株を刈り倒し、これをトラクターで牽引するピックアップスレッシャ又はピックアップヘッドを装着した汎用コンバインを用いて拾い上げると同時に脱粒していく方法で、北海道において、従来の「ニオ積み収穫体系」に代わって最も広く行われている収穫体系です。
(注)ビーンカッタ:複数条の刈取り株を集約してほ場に列状に並べていく機械。

ダイレクト収穫体系

ピックアップ収穫体系と同様、完熟期以降に、専用又は汎用コンバインを用いて、あずきの株の刈取作業と脱粒作業を一工程で同時に行う省力的な収穫方法で、北海道で普及しつつあります。